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久間十義 『聖ジェームス病院』
聖ジェームス病院

研修医の東翔平は、帯状疱疹で受診した患者に、劇的に効果のある新薬を処方した。しかし、帯状疱疹はすぐに消えたものの、患者は劇症腸炎を発症し死亡。新薬をめぐり、大学病院医局・薬品会社・株のインサイダー取引・医療過誤訴訟と様々な問題が絡み合う。そして、院内で突如拡がった院内感染。汚染源はどこなのか、翔平たちは限られた時間の中で必死に探し始めるが―。

 病院ものは好きなので期待して読み始めたのですが、初めて読む作家でどうもリズムがあわない。翔平たち研修医、薬品会社上層部、記者、患者家族とコロコロ場面が変わるのも、話に完全に乗れない原因に。いいところで切るの、最近CM前のドラマやバラエティ番組にありますが止めてほしいです、ホント。

 病院ものが好き、なんて書きましたが、たいして読んでいるわけではありません。『白い巨塔』も未読。ドラマを見て読みたくなった口です。これは絶対に読んでおこうと思っています。
 ですから偉そうなことは言えないのですが、新薬をめぐっての治験・認可問題やインサイダー取引などというのは、わりと定番な気がします。そして医療過誤訴訟についても。小説として定番ということもありますが、最近実際にニュースでもよくありますからね、特に訴訟なんて。そして大学病院医局制度の話(いわゆる派閥など)とか、研修医の過酷さなんていうのも、よく聞く話。
 
 主人公の性格ですが、擦れていない新米の医師としての正義感が、嫌味にならない程度に抑えられていたのは好感が持てました。同じ研修医でも、もっと要領のよい人間もいたりして、その辺でうまくバランスがとれていて、なかなかリアル。

 あまりのめり込んで読めなかった中、終盤の院内感染の件はスピード感があってよかったです。タイムリミットが迫る中での緊迫感、焦燥感が伝わってきましたし、さりげなく汚染源らしい場所が見つかったときの衝撃は、登場人物たちとたぶん同じ気持ちになっていたかと思います。

 株の話はともかく、医師も人間ですから、迷うこともあれば間違いを犯すこともあります。もちろん自分や身近な人間にそんな災難が降りかかってきたら、こんな悠長なことは言っていられないのでしょうが、けれど、人の命に対して軽視だけはしないでほしいし、常に目を見開いていてほしい。
 これは患者となる私たちの願いです。ですから、主人公の研修医翔平の未熟さにも好感が持てるのでした。

★★★
| 読書 小説 | 23:39 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑TOP
東野圭吾 『白夜行』(再読)〜原作とドラマ
内容に触れていますのでお気をつけください



ドラマ化ということもあり、およそ六年半ぶりに再読しました。
さすがに刊行当初に読んだときの衝撃はありません。続編とも言われる『幻夜』や、似たような手法の『殺人の門』がその後刊行されているということもありますので。

再読する前は、ほとんど内容を忘れていました。それでも印象に残っていた場面というのはいくつかあり、そのトップが、雪穂のキーホルダーの鈴の音でした。だからドラマ化の話を目にしたとき、まずその場面を楽しみにしたのです。

しかし、残念ながらその描写は省かれてしまっていました。
私が鈴の音にこだわった理由は、この小説の読み方というか、意味のようなものをその場面で知ったからです。そして、雪穂の本当の冷たさを。
こんなこと、私が今さら言うことでもありませんけれども……、『白夜行』のおもしろさは、雪穂と亮司の内面と裏の行動が描かれないことで想像力を駆使しながら読むことにあると思います。そして、鈴の音は、読者が最初にそのことに気づく場面なのかなと思うわけです。だから大切。

というわけで、ドラマの第一回目を見て残念、と思いましたが、ドラマはまったく別と考えればそれも当然であったわけです。再読して確信しましたが、やはり原作とドラマの雪穂は、決定的に違う人間ですから。
ドラマの冒頭の雪穂の涙。原作の雪穂は絶対に涙など流さないでしょう。少なくともあんな公衆の面前では。そうです、鈴の音の場面の雪穂ですから。涙を流すはずがありません。

雪穂と亮司に恋愛感情はあったのか。難しいなぁ。亮司にはあったと思うけれど、雪穂は……。最初はあったかもしれないけれど、成長するにしたがって、恋愛感情ではなくなっていったのかもしれないと思います。心の深い部分では繋がっていたけれど、同士くらいの意味か……。だって二人が一緒に歩くには、重すぎる物を背負いすぎていますから。

ドラマの雪穂は違う人間と書きましたが、それに関して私はまったく異議はありません。原作を傑作と思い、東野さんの代表作だと信じ大好きな話ですが、ドラマ二回目まで見た限りでは、ドラマはドラマでとてもよい出来だと感じたからです。
二人で太陽の下を歩ける日がくるまで、という前提があるならば、ドラマの雪穂と亮司の描き方はあれがベストなのではないかな。この先どんな風に描かれていくのか、不安でもあり楽しみでもありますけれども。

原作のある物語が映像化されるとき、必ず反対や心配の声はあがりますし、私も原作のイメージを大切にしたい作品には、嫌な気持ちになることもあります。なかにはタイトルと最初の設定だけを借りたようなドラマもありますからね。
今のところ『白夜行』は、原作の解釈のひとつとして、たいへんおもしろく見ています。武田鉄矢演じる刑事も不気味でつい見入ってしまうし(笑)。

白夜行
白夜行
| 読書 小説 | 17:37 | comments(0) | trackbacks(1) | ↑TOP
平安寿子 『愛の保存法』
愛の保存法

 いつもの"たいら節"満載の小説集でした。傍若無人だったり、ひとりよがりだったりする人のまわりで、それに付き合うことが人生の一部になってしまった人の物語。

 表題作の中の一節に、
ああ、常識があるって、損。常識って制約だもの。
掟破りの非常識人間に勝てるはずがない。
とありますが、これ、平さんの書く物語ほとんどに共通だと思います。だから、あんまり続けて平さんの本を読むと飽きるかもしれません。でも時々ちょっとした味付けに読むと、なかなか爽快だったりするのです。

★★★
| 読書 小説 | 16:46 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑TOP
伊坂幸太郎 『砂漠』
砂漠

酷評かも!ごめんなさい!


『グラスホッパー』を読んだとき、私には登場人物の心がまったく見えなかったと思った。でも、そのときは、あまり好きなタイプの話ではないから……と思い、無理やり納得してしまった。
 けれど、今回確信した。
私には、このタイプの伊坂作品には、もうおもしろさを感じられなくなってしまったようだ。とはいっても、最初ははずれかな、などと感じながら読んでいたものの、春夏秋冬の夏の章の終わり頃からは物語を追いかけることに苦痛を感じなくなったので、それなりにおもしろくは読んだ。けれど、それはこの物語がどう終息するのか、また、いつもの伏線の回収が、今作ではどんな風かが気になったからであった。

 思うに、伊坂作品を初めて読んだ『重力ピエロ』で、雷にうたれたかのような衝撃を受けた読書体験も、その後の似通った登場人物の性格設定により、飽きてしまったようだ。この『砂漠』は、私には『アヒルと鴨のコインロッカー』や『チルドレン』となんら変わりのないものとしか思えなかった。登場人物の行動にもセリフにも、よくできた芝居の脚本を読んでいるような印象しか得られず。
 ネットで評を拾い読みしてみたが、みなさんおもしろかったようで、なんだか悲しくなる。私は新鮮さだけに惹かれていたのだろうか……。

 せめて『魔王』の次の刊行というのだけは避けてほしかった。

★★
| 読書 小説 | 15:02 | comments(2) | trackbacks(0) | ↑TOP
緑川聖司 『プールにすむ河童の謎』
プールにすむ河童の謎―緑川事件簿

『晴れた日は図書館へいこう』の緑川さん。

 私の新年一冊目は児童書です。
というのも、年末に読んでいた本がどうにも進まず、結局投げてしまったのですが、年明けに読み始めた本も全然入っていけなくて、こちらも放棄。こんなときは寝食を忘れて没頭できるミステリがいいかな、なんて思ったものの思いつかず、結局さらっと読める児童書にしたというわけです。
 前作は図書館にまつわる謎が思いのほかおもしろく、今度も期待して読み始めました。タイトル通り、小学校のプールで目撃された河童の話なのですが、もうひとつ事件が起こっていて、さすがにこれはわかりやすいものでした。この謎の答えがわからないようでは、これまで何冊もミステリを読んできた意味がないと思われますので、少し安心。
 正統派の児童書ミステリでしょう。

 今年は、おもしろくないと思ったり、読むのが苦痛になった本は、きっぱりと閉じることを昨年以上に徹底していこうと思います。読みたい本の数に、読むスピードがなかなか追いつかないので……。

★★★

----------

こっそりと第134回直木賞の予想などしてみたいと思います。
候補作の中で未読なのは、恩田陸『蒲公英草紙』と恒川光太郎『夜市』の二作。ですので、これらについてはまったくわかりません。
荻原浩『あの日にドライブ』、これは絶対ないでしょう。名前のお披露目くらいの意味だと思います。数回後に受賞することでしょう。
残った、伊坂幸太郎・東野圭吾・姫野カオルコの三作品のうち、もっとも選考委員受けしそうなのは姫野カオルコ『ハルカ・エイティ』でしょう。私個人としては、大ファンであり、苦杯を嘗め続けている東野圭吾『容疑者Xの献身』にぜひ!という気持ちでいっぱいではありますが。伊坂幸太郎『死神の精度』は、選考委員にどう評価されるのかとても興味があります。全然想像がつかなくて困ります。

というわけで、私の予想は姫野カオルコ『ハルカ・エイティ』。
ただもしも、すでに功労者となってしまった感のある東野さんに、と選考委員が考えてくれたら、『容疑者Xの献身』の受賞もありということで。
さあ、どうなるか……。
| 読書 小説 | 22:46 | comments(4) | trackbacks(0) | ↑TOP
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