見ました。
伊良部役が阿部寛と聞いたときから、それ違うでしょう、と思っていましたが、やっぱり原作の伊良部とは異なっていました。
原作の伊良部は本当の子どもなんです。いや、もしかしたら現実の子どもの方がもっと大人かもしれない。とにかく無邪気で、たぶん伊良部にとって患者は友だちで治療は遊び。(無理やり)一緒に遊ぶことになってしまった患者たちが、勝手に癒されていくというのが私の解釈です。
ドラマの伊良部も、患者を友だちと言っていましたから、この辺は同じだと思います。無理に付き合わされる患者という設定も流れも一緒。では何が違うと思ったかというとそれは、伊良部が少しだけ大人だったこと。ほんの少し精神科医としての顔を覗かせていました。
原作でそれが見られないわけでもないけれど、原作での伊良部のそんな顔は偶然によるものだと信じている私なのです。
けれど、阿部寛の伊良部もよかったです。
アブナさが醸し出されていましたよ。カッコよすぎですけど(笑)。
以下、2004年5月の私の『空中ブランコ』感想です。
空中ブランコ
奥田 英朗
破天荒なトンデモ精神科医・伊良部が活躍(?)するシリーズ第二弾!
【空中ブランコ】サーカス内で育ち生え抜きの団員である公平。昔とは変わった団の中で、ジャンプが思うようにできなくなり・・・。
【ハリネズミ】尖端恐怖症のヤクザ・誠司。ヤクザが刃物を怖がるなんて言語道断だが。
【義父のヅラ】母校の学部長の娘と結婚した大学講師で精神科医の池山。人前で派手なことをしたくなる衝動に駆られる毎日。同級生の伊良部の元を訪れ・・・。
【ホットコーナー】プロ野球球団に入団以来レギュラーとしてサードを守ってきた真一。最近若手が入団しチヤホヤされ始めるとなぜかまったくコントロールが利かなくなり。
【女流作家】おしゃれな恋愛小説を量産する流行作家の愛子。でも、いざ新作に取り掛かろうとすると嘔吐してしまい、さらに強迫症の症状も。
伊良部が初登場した前作の衝撃は、それだけでもすごくて夢中で読みました。なので、新鮮さや衝撃という点では劣るかもしれませんが、今度は逆に予定調和的な面白さが加わり、ますます面白かったです。
注射が大好きで、人(患者)の話なんて聞かないし、何にでも興味を持って人の迷惑なんて顧みない伊良部。なのに「また来てねー」と言われると断れない患者たち。医者に振り回されているうちに自分の悩みと向き合うことができるようになり、なんとなく癒されてしまう。。。
何度も伊良部は子供のようだという表現が出てきます。人間、大人になるに従ってなんて生きにくくなるんでしょう。伊良部みたいに自分の欲望だけで生きていけたらどんなに楽か。きっといろんなシガラミに縛られている患者たちは、そんないい意味で純粋な伊良部と接することで自分を取り戻して行くのでしょう。
・・・なんて、ちょっと真面目に考えてみましたが。
そんなこと本当はどっちだっていいんです、私。とにかくこのシリーズはオモシロイ。
それだけです。そうそう、ラストで普段仏頂面の看護婦マユミが泣かせてくれます。必見(?)。
★★★★★