文学賞メッタ斬り!
大森 望, 豊崎 由美
エキサイトブックスで読んでいる時から、芥川・直木両賞の選考委員の作家に対して、小ばかにした発言が気になって気になって、
もちろん、そんなの計算して言っているのだろうということは想像できるのですが、どうしても馴染めませんでした。
とは言っても、大森氏、豊崎氏の言いたいことは非常によく理解できるし、また的を射ている発言ばかり。
さすが、あらゆるジャンルの小説を半端でない数読んでいるだけあって、取り上げられている各文学賞の性格が、とてもわかりやすかったです。
芥川賞が生まれたのは、創設者の菊池寛が雑誌の売り上げが落ちる2月と8月の「文藝春秋」の部数増を狙った為・・・
なんて薀蓄も満載で、日頃そんなに文学賞に興味はないけれど、なんだかこれからはもっと楽しめそうな気もしてきました。
ただ、これを読んでいて感じたのは、豊崎氏の好みは私とはまったく合わないということ。
むしろ豊崎氏がテルちゃんとこきおろす宮本輝の感性に私は近いと思ったこと。
「現代文学をテルちゃんは読めてない」という発言について、それは仕方ないのではないかとついつい反論したくなる自分がありました。
だって、文体には生理的に受け付けないものがあるのだから。読むのが苦痛な文章はどうしても存在してしまう。
私の場合苦痛とまではいかないけれど、恩田陸(一部を除く)や村山由佳は本当に苦手。
相性じゃないの?と思います。ですが、私自身、なかなか「読めない」自分にイライラしますけれども・・・。ばかだなぁ私、って。
そんな片寄ったところがあるのなら、選考委員を辞めてはという意見には反対しないけど。
だいたい、作家、しかも選考委員を任されるような方々には、独自の文学観・小説感があり、自分の作品でそれを発表されているのですから、
自分とは著しくかけ離れているものは受け入れられないのではないかなぁ・・・。
だとしたら、書評家で、とにかく読んでいる方々に選考を任せるのがベストなのかもしれないなと思ってみたりします。
そういうことでは、「このミス大賞」なんかがまさにそれです。
そうだそうだ!と思った箇所直木賞は賞をあげる時期・作品を間違えている確率が高い。(豊崎)
まったくその通り。東野圭吾に『白夜行』で授賞しなかった時、もうだめだと思いました。
それに関連して『白夜行』落選の理由の中に、主人公の内面分け入っていないというものがあったことについては脱力。そこがこの作品の要なのにね。
東野さんは、その後も候補にはなるけど落選。もういいかげんにしたらと思います。
平安寿子『グッドラックららばい』が傑作でしたけどね。直木賞か山本賞の候補にならなかったのが不思議なくらい。(大森)
この作品は私もイチオシ。ちなみに『もっと、わたしを』もおすすめしたい。
読みたいと思った本
・水野スミレ 『ハワイッサー』
・銀林みのる 『鉄塔 武蔵野線』
・レーモン・クノー 『文体練習』
日常的な光景を九十九通りものスタイルで書き分けたもの。