DIVE!!〈1〉前宙返り3回半抱え型
森 絵都
おもしろかった〜。
内容紹介など不要の話題作、やっと読みました。高飛込みは、時々テレビに映ると、あっという間の出来事で、どちらかというと入水の美しさしか見ることができていなかった競技です。本の中にも出てきますが、競泳の影に隠れたような形で、話題にも上らないし、実際あまり見る機会もないですし。
ところが、その飛込みという競技が、森さんの筆にかかると、ものすごく魅力的なものに大変身。もう、今すぐ飛込みの試合を見たいー!という思いでいっぱいなのです。
これまで平凡な点数しか出せなかった中学生の知季。青森でひとり海に向かって飛んでいた飛沫。そんな二人の才能に目をつけ、本来の力を発揮させたコーチ夏陽子。そして、これまでライバル不在に近い状態でいた要一は、知季と飛沫の成長により、さらに自分を磨いていく。
彼らに共通する思いは、とにかく飛込みという競技が好きだということ。
ただし、個人競技で、しかも採点によって勝敗が決まってしまうとあれば、ほんの少しの心の乱れは大きなマイナスにつながります。同じクラブで毎日練習して、競技を離れれば仲の良い友だちでも、本当はみんなライバル。
でも、ときどき思います。六人でやるバレーとか、九人でやる野球とか……
みんなで戦ってみんなで勝てるスポーツはいいな、って
一巻でひとり取り残されるレイジの言葉です。
勝ちも負けも全部ひとりで背負わなければならないなんて。きっと実際の選手たちは孤独に厳しい練習をしていることと思います。
けれど、少なくともこの物語の中では、飛込みが本当に孤独なものではありませんでした。仲間でありライバルである彼ら。でも、ひとりじゃないからここまで来れた。そんな暖かな読後感でありました。
同じくらいの歳の子たちで、野球を扱った『バッテリー』は団体競技でしたが、あちらの方がより孤独な感があります。そこまで厳しく書かなくても……などと思いつつ読んだ『バッテリー』よりも、私はこの『DIVE!!』が好き。
★★★★★