反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパーク 5
石田 衣良
「スカウトマンズ・ブルース」「伝説の星」「死に至る玩具」「反自殺クラブ」の四編を収録。
毎回、社会問題とされているテーマを織り込んだこのシリーズですが、今回は、日本の消費社会を支える見えない地獄を描いた「死に至る玩具」と、ネットの自殺サイトと呼ばれる場所で集まった者たちによる、集団自殺を描いた「反自殺クラブ」に、そのまま通り過ぎることのできない気持ちにさせられました。
「死に至る玩具」は、若者の間で熱狂的な人気の人形が、実は中国の貧しい女性たちの命と引き換えに作られていたのだという話です。物があふれ、それなりのお金を手にすることのできる日本。そんな中で暮らしていると、物欲だってどんどん膨らんで行くのはしかたのないことだと思います。自分の周囲の物を見渡せば、ほとんどが外国産。しかも中国やマレーシア、台湾などアジア諸国ばかり。
作っている国のことをいちいち気にしていたら、食べ物から衣類・おもちゃ・電気製品まで、何も買えなくなってしまう。でも、社会に踊らされている自分というのを、時々感じることもあります。そんな時はせめて今身近にあるものは大切にしようと思うし、もったいないという言葉は絶対に忘れないようにもしています。
でも、私たち消費者にできるのはそれくらいではないかな。あとはそれを提供する側の問題が大きいと思うのです。今回もそういうお話。何も知らない私たちもいけないかもしれないけれど……。なんだかジレンマに陥りそうです。
「反自殺クラブ」とは、集団自殺を阻止するために作られたクラブ。彼らは親が自殺をした遺児。自殺は自分の問題。死にたい人を無理やり止めても気の毒なのではないかと、以前の私は思っていました。でも今は少し違います。というか、考えはまだ揺れているというのが本当ですが、少なくとも、自殺によって傷つく家族の存在を知ったことは大きいのです。テレビだったか、本だったか、親が自殺したということを言えない子どもたちというのを知りました。そして、自分を責めたり、自分も自殺をしてしまうのではないかと考えてしまうということも。
自殺は決して本人だけの問題ではないということを、恥ずかしながらその時に認識したというわけです。今回のクラブの彼らもそんな風にして遺されてしまい、重りを抱えている子たちなのでした。
ネットによる集団自殺は、親である人よりも、若者の方が多そうですが、仲間がいるということで、勢いに乗ってしまうというのがとても怖いことです。相乗効果といいますか、ひとりひとりの小さな絶望が、数人分集まったとき、どれだけの大きさになるのか。
今回のマコトはおとなしめでした。王様タカシの出番も少なく、地味というか地道というか、そんな解決方法もまたいいですね。
★★★