ミッキーマウスの憂鬱
松岡 圭祐
書評家・藤田香織さんの日記
だらしな村で紹介されていて気になった本。
ディズニーランドの従業員のことをキャスト、裏方をバックステージ、表のランド内をオンステージと呼んだりすることすら知らなかった私。かろうじて地下道があるということくらいは聞いたことがありましたが……バックステージに道路があったりいろんな建物が建っていたりなんて、考えたこともなく。私はもう7,8年は行っていないし、特に好きではないけれど、何でも自分の知らない裏の話って興味が沸くという、ホントまさに興味本位の読書。
後藤は張り切りすぎて空回りはする、勤務の一日目から先輩の話し合いに口出しする、でも勝手に期待していたことを裏切られると嫌気が差すといった困ったクン。とにかく元気とやる気はあるけれど、ディズニーランドの夢のような舞台を裏にも求めていたため落胆の度合いも激しい(笑)。
後藤が勤め始めてからたった三日の間の物語で、夢と現実のギャップにとまどいながらも、ミッキーマウスの着ぐるみの紛失事件に係わり、人間的に成長していくというよくできた話。
バックステージの現実については、フィクションという注意書きもあり、私にはどこまでが本当のことなのかまったくわかりませんが、これが事実だとしたら、
「夢があるのはオンステージ。バックステージにあるのは現実だけ」
という、先輩の由美子の言葉が重く感じられます。
ディズニーランドも企業のひとつであり、正社員と準社員の間に軋轢が生じたり、本社のお偉方には成績や出世などだけを気にする人間がいたりとなかなか生々しい。
後藤の成長物語はともかく、ディズニーランドにそれほど魅力を感じない私が読んでもバックステージの話は面白かったので、好きな方ならもっと楽しめるのかもしれません。
あ、でも、夢だけを見ていたいなら読んではいけません。
★★★