田舎の金持ち相手に、埋蔵金発掘の詐欺をはたらこうとしていた高杉とその舎弟の園部。ところが交渉中に、思わぬ美女の邪魔が入る。後日、バッタリ再会した三人は、ある誘拐計画を企てるのだが―。
正しい(?)誘拐ものだった。といっても、ユーモアまじりのため、まったく深刻さはない。身代金奪取の方法として、金を出す親の性格を重視したことに目からうろこの気分を味わったけれど、実は読了してみて少し拍子抜けだった。
何を書いても、ネタをばらすことになってしまいそう……ということで、ここから反転。
最初に高杉の携帯に巧誘拐のメールが届いたとき、完全に巧の狂言だと思った。高杉たちに自分の誘拐計画の詳細を語っておき、実は他に共犯(協力)者がいて、まんまと騙すつもりだろうと。巧だったらそれくらいしてもおかしくないと思ったから。けれど、高杉たちがその可能性についてまったく思いつかないようだったため、おかしいな?と思い始めたところ、巧視点で話が始まってしまい、それは私の完全な思い違いと判明する。
次に疑ったのは、刑事の天王寺。ガタイがいいとか無口とか、とにかく思わせぶりで。でも、被害者の自宅に詰めている刑事がどうやって関わっているのか、その点やはりおかしいと感じてしっくりこない。
となると今度は園部が怪しい。高杉は園部のことをかなり馬鹿にしているようだが、要所要所で的確な発言をしたり、どこにいるのか不明と思わせるような部分が気になり、実は頭の切れる男なのではないかと思った。園部ならば、高杉たちの計画も性格も熟知しているだろうから。
途中、金本にも思いを巡らせたが、すぐに忘れてしまうという体たらく……。きっとわかる人にはすごく簡単なんだろうなぁと真剣に思った。
これらは著者に誘導されただけかもしれない。結局巧の両親や刑事たちがどうなったのかわからないため、天王寺のことはたぶんそうなのではないかな。でなければ、陰木や天王寺の性格づけと登場の意義が不明だ。刑事の空腹場面などとあわせて、単なるユーモア部分の補強にすぎなかったということなら、本当に考えすぎなのだけど。(ここまで)
注意深く読み進めていれば、その真相には容易にたどりつくと思う。
いや、注意深くなくてもわかるかも。けれど、どうも中途半端な部分が多いのではないか。結局あの人とか、あの人はどうなったの?と消化不良なのだ。
だから拍子抜け。ラストはうまく締められているが、振り回された分もっと説明を求めたい気持ちは自分勝手?
『追憶のかけら』を読んでからもう一年。あれは本当におもしろかった。この『悪党たち〜』もそれなりにおもしろいけれど、特別な何かはない。
★★★