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三崎亜記 『バスジャック』
バスジャック

「二階扉をつけてください」「しあわせな光」「二人の記憶」「バスジャック」「雨降る夜に」「動物園」「送りの夏」

 美しい。

「二階扉〜」や「バスジャック」なんかは、『となり町戦争』の流れを汲む物語。
 自宅の二階に扉を付けることが常識になっていたり、バスジャックがブームになり、バスジャック正常化委員会なるものができていたり、突拍子のない設定を前提として、架空のお知らせや法律を作り上げた中での話というもの。特に「二階扉〜」は、『となり町戦争』と同じように、主人公が周囲の常識をまったく理解していなかったことから物語が始まる。だから、矛盾する言葉だけれど、現実的なファンタジーが好きならば、とても面白く感じる話だと思う。
 でも、やはり『となり町戦争』が(私は)傑作だと感じているので、失礼ながら亜流の域を出ない。
 その他、「しあわせな光」「雨降る夜に」などは、不思議物語だが心暖まる物語で、ショートショートに近いが余韻が残る良い話だった。

 最初に記した、美しい、という言葉は、最後の二編「動物園」「送りの夏」に対してである。読み終えて、ぼぅっとその余韻に浸り、思うことはいろいろあるのに言葉が浮かばない中で、一番に出てきたのが、その美しいという言葉だった。どう感想を書こう……と悩み、自分の『となり町戦争』の感想を読み返してみて、静謐という言葉を見つけたけれど、それが近いかな。
 特に「送りの夏」。
誰かを失うことへのけじめのつけ方はひとそれぞれなのだ (p217)
 人の死というものを知ってはいても、初めて言葉ではなく自分の肌ではっきりと死を感じた小学生の麻美の物語。
 お葬式は忙しいくらいがいい。それは、悲しみを感じる余裕をなくさせるから。こんなことをよく聞く。確かにそれもいい。直後の悲しみを忙しさで多少でも紛らわせ、静かになった頃から心の整理をするのも。けれど、そんな人ばかりでないことがあったっていいじゃないか。それだけ、誰かの死までの生活と別れにはいろんな種類があるのだから。こんな風に言葉にしてしまうと、あたりまえのことを読まされている気分になるかもしれない。それはひとえに私の文章力のなさゆえであって、ぜひ読んでそれぞれの心で感じてもらいたい。
 生と死は対のようだが、実は直線上で繋がるもの。主人公の麻美を通して改めて伝えられたことだった。

 凪の物語。
いつかまた風は吹く。波の高い日もあるだろう。そんな物語。すばらしかった。

★★★★
| 読書 小説 | 22:14 | comments(2) | trackbacks(2) | ↑TOP
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最後の2篇、いいですよね。
私の場合『動物園』の美しさと発想の素晴らしさにやられました。
静謐、いい言葉です。
この作者は、不思議な世界を設定しておきながら、それに対する説明を用意しないところがとても気にいっています。
| りあむ | 2005/12/14 8:17 PM |
りあむさんのところにTBを送った後、コメントも書いたのですが、何度送信してもエラーになってしまい、そのままになってしまいました。
すみませんでした。
巷では、『動物園』の評価はかなりよいようですね。
私は不思議物語が苦手なものですから、最初は嫌だな……と思って読み始めたのですが、どんどん引き込まれていきました。
不思議な世界の説明があったら、確かに興ざめです。
そういうものがなく、それでも読者の頭に世界が広がるところは本当にすごいですね。
| ココ | 2005/12/16 10:42 AM |
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