対岸の彼女
角田 光代
二つのパートが交互に書かれている。
一つは仕事をしだした小夜子のこと。
そして、もう一つは、高校生の葵に起こった過去のこと。
小夜子は人と深く関わることをとても恐れていて、公園内で出来る派閥などに気を重くするタイプ。
そして、葵は中学生の頃いじめられて、高校生になる時まったく違う土地に引越した過去がある。
学校という場所はとても残酷だと思う。
少なくとも女の子にとっては。
気が合えばまだしも、合わなくたってどこかのグループに属していないと、とたんにあの子変ってる・・・と言われる。
自分がそのグループやクラスから浮かないようにするために、時には何とも思っていなかった子まで攻撃対象にする。
それは、積極的、消極的を問わずに。
これは、学校を出て、どこかの会社に就職したってたいして変らないことかもしれないけれど。
そんな歪んだ和の中に入ることの出来なかった、あるいは、嫌だと思っても怖くて抜け出せなかった彼女たちの、切なる思いがひしひしと伝わってくる物語だった。
「なんであたしたちはなんにも選ぶことができないんだろう」
「なんのためにあたしたちは大人になるの?大人になれば自分で何かを選べるようになるの?
大切だと思う人を失うことなく、いきたいと思う方向に、まっすぐ足を踏み出せるの?」
こんな高校生の葵の叫びは、大人になって小さいながらも会社を経営していても、まだ続いているようだった。
そして、そんな葵との間にあった小さな接点から、人と関わりあうことへの意識の変化がある小夜子。
「なんのために私たちは歳を重ねるんだろう」
こんな問いを自分にしていた小夜子の出した答えが、葵の高校生の時の叫びと重なり合うラスト。
共感できる部分ばかりだけど、それゆえに自覚したくないことまで自覚させられてしまう角田さんの小説。
こういう話、読みたくないんだよね、と言ってしまえば簡単だけど、読み終えるとものすごい充実感。
悔しいけれど、完敗。